法律用語に、「債権者」という言葉があります。また、類似した用語には債務者もあり、それぞれの意味や違いは混同しやすいものです。しかし、債権者や債務者という用語は、日常生活に置き換えると自分にも当てはまるケースが多々あります。 そのため、両者の意味や違いを把握しておかないと、思わぬトラブルになることもあるでしょう。そこで本記事では、債権者の定義や債務者との違い、債権者ができること、債務不履行時の対応、そして債務者破産時の影響まで詳しく解説します。
債権者とは、他人に対して金銭や物の引き渡しなどを請求できる人のことを指します。たとえば、お金を貸した人や商品を販売した人が該当します。また、債権者の権利は法律で保護されており、債務者が約束を守らない場合はさまざまな手段を取ることが可能です。
債務者は、債権者に対して義務を負う立場にある人です。よって、債権者と債務者は関係性として対極にいるといえるでしょう。
債務者の主な義務は、約束した内容を期限までに履行することです。これには借りたお金を返済したり、購入した商品の代金を支払ったりすることが含まれます。
ただし、債務者にも一定の保護があります。生活や事業の継続に必要な最低限の財産は、差し押さえから守られます。これは、債務者の基本的な権利を保障するためです。
債権者には、債務者に対してさまざまな権利があります。
まずは、弁済の請求があります。債務の履行期が来たら、債権者は債務者に支払いを求めることが可能です。この請求は口頭でも書面でも可能ですが、内容証明郵便を使うと証拠として残ります。
次に、債務不履行時の対応として、損害賠償請求や契約の解除も権利のひとつです。債務者が約束を守らない場合、債権者は被った損害の賠償を求められます。また、債務者に対する契約の解除も可能で、債務不履行が重大な場合に契約自体を終了させられます。ただし、解除の要件を満たしているかを慎重に判断する必要があります。
保証人がいる場合は、保証人に対して請求することも可能です。保証人は債務者の債務を保証する立場にあるため、債務者が支払えない場合に代わりに支払う義務があります。ただし、保証人への請求には一定の制限があり、まずは債務者に請求しなければならない場合もあります。
債務が履行されない場合、債権者には段階的な対応策があります。
最初は内容証明郵便などによる請求から始めるのが一般的です。この方法は、債務者に対して正式に支払いを求める文書を送付します。配達の記録が残るため、後の法的手続きの際の証拠にもなります。
次に、支払督促の申立てを検討します。これは裁判所に申し立てを行い、債務者に支払いを命じる書類を送付してもらう手続きです。債務者が異議を申し立てなければ、確定判決と同じ効力を持ちます。また、比較的簡易な手続きで債務名義を得られる点がメリットです。
それでも債務が履行されない場合は、訴訟の提起に踏み切ることになります。訴訟の提訴は、裁判所で債権の存在と金額を確定させる手続きです。勝訴すれば、強制執行の基礎となる債務名義を得られます。ただし、時間と費用がかかるため、慎重に判断する必要があります。
最後の手段として、強制執行の申立てがあります。債務名義をもとに、裁判所を通じて債務者の財産を差し押さえ、換価して債権を回収します。そのため、債務者の資産状況を事前に調査しておく必要があります。
債務者が破産した場合、債権者は全額回収が難しくなります。なぜなら、破産手続が開始されると、債権者の個別の権利行使が制限されるためです。
また、債権者は破産管財人に対して債権届出を行う必要があります。この届出期間内に手続きを済ませないと、債権の行使ができなくなるでしょう。
その後、破産財団の換価・配当の過程で債権者は平等に扱われます。ただし、優先順位があり、一般の債権者より先に弁済を受ける債権もあります。たとえば、税金や従業員の給与などが該当します。配当額は破産財団の規模により変わり、多くの場合で債権額の一部しか回収できません。場合によっては、全く回収できないこともあるでしょう。
破産手続が終了したあとは、債務者である個人は免責許可を得ることがあります。この場合、残った債務の支払義務がなくなるため、債権者は請求ができなくなります。
今回は債権者の権利と対応策について、基本的な概念から具体的な手続きまでを解説しました。債権者にはさまざまな権利があるため、状況に応じて適切な対応がとれます。債務者の破産時には、迅速な手続きが求められます。本記事を参考に、債権者や債務者の理解を深めてみてください。